「Kressmann(クレスマン)」は、フランスのボルドー地方に本拠を置く、非常に歴史の古い著名なネゴシアン(ワイン商)です。単一のシャトー(ぶどう畑と醸造所を持つ生産者)ではありません。
Kressmann社の概要と歴史
創業: 1871年、エドゥアール・クレスマン(Édouard Kressmann)によって設立されました。彼は1858年に故郷のプロイセンからボルドーに移り、ワイン取引の世界に足を踏み入れました。
ネゴシアンとしての役割: クレスマン社は設立当初から、ボルドー地方の優れたワイン生産者(シャトー)との長期的なパートナーシップを築き、厳選されたブドウやワインを買い付け、それを自社のノウハウでブレンドし、独自のブランドとして販売するというビジネスモデルを確立しました。
品質へのこだわり: 創業以来、「選択」と「ブレンドの芸術」を哲学として掲げ、高品質なワインを提供し続けています。同社のエノロジスト(ワイン醸造学者)たちは、契約するシャトーと密接に連携し、品質向上に努めています。
象徴的なブランド: 1897年には、ボルドーで最も古いブランドの一つである「Kressmann Monopole Dry」を立ち上げ、現在でもそのブランドは親しまれています。
家族経営からグループ傘下へ: 長年家族経営を続けてきましたが、2007年には大手シャンパングループであるアラン・ティエノ(Alain Thienot)グループの一員となりました。これにより、より広い流通網と資源を活用できるようになっています。
国際的な展開: クレスマンのワインは、50カ国以上で販売されており、その品質とブランド力は世界的に認知されています。
「Grande Réserve(グラン・レゼルヴ)」シリーズについて
「Grande Réserve」は、クレスマン社が手掛けるワインの主要なシリーズの一つです。このシリーズの哲学は「ボルドーのテロワールの本物の味」を提供することにあります。
クレスマン社は、ボルドーの様々なアペラシオン(原産地呼称)にまたがる広大な契約ブドウ畑(総面積1,000ヘクタール以上とも言われる)から、その年のブドウの品質やアペラシオンの特性を最もよく表現するワインを厳選し、ブレンドして「グラン・レゼルヴ」として瓶詰めします。
Sauternes(ソーテルヌ)以外にも、Médoc(メドック)、Margaux(マルゴー)、Graves(グラーヴ)、Bordeaux Rouge(ボルドー・ルージュ)など、様々なアペラシオンの「グラン・レゼルヴ」ワインを生産しています。
Kressmann Grande Réserve Sauternes の生産方法(一般的なルーピアック/ソーテルヌの貴腐ワインの生産方法)
Kressmannが自社のシャトーでブドウを栽培しているわけではありませんが、ソーテルヌAOCのワインを生産するにあたり、以下の貴腐ワイン特有の生産方法が適用されます。
貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)の利用:
ソーテルヌ地方のワインは、シロン川とガロンヌ川の合流地点で発生する霧と、その後の晴天という特殊な気候条件により、ブドウの皮に「貴腐菌」と呼ばれるカビが自然に発生することで作られます。
この菌がブドウの水分を蒸発させ、糖分や酸、香りの成分を凝縮させます。
手摘みと選果(トリヤージュ):
貴腐菌の付き具合は房の中でも粒ごとに異なるため、収穫は機械で行えず、熟練した職人による複数回の手摘み(トリヤージュ)が行われます。完全に貴腐化したブドウ粒のみを選び取ります。
醸造:
凝縮されたブドウは非常に糖度が高いため、発酵は途中で自然に停止し、大量の残糖がワインに残ります。
多くの場合、フレンチオークの樽で長期間(18〜36ヶ月程度)熟成されます。これにより、ワインに複雑な風味と熟成能力が与えられます。
まとめ
Kressmannは、ボルドーにおけるこうした伝統的なワイン造りの工程と、同社のブレンディングの専門知識を組み合わせることで、安定した品質と、価格以上の価値を持つソーテルヌを市場に提供していると言えます。
つまり、Kressmannは「畑を持つ生産者」ではなく、「ボルドーのワインを熟知し、優れた素材を厳選し、独自の哲学でブレンドして価値あるワインを提供するプロフェッショナルなワイン商」であるということです。彼らの長年の経験と実績が、Grande Réserve Sauternes の品質を支えています。

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